豊年や百羽の散らす百の影

「豊年」は五穀一般の実りのよいこと。ことに稲の実りがよいことをいう。「豊年や」と上五に置くとき、眼前に思い浮かべるのは一面に実った稲穂の波だ。

掲句は一面実った稲田の上を翔ける一群の鳥を描いた作品。どのような心理か習性かは知らないが、鵙などを除き、鳥たちの多くは実りの秋から冬にかけて群れで過ごすようだ。時には群れの中に種類の違う鳥が交じっていることもある。雀など普段は余り目につかない鳥たちも、この時季には気負ったように群がって餌のある所に我先に翔けてゆく。刈田の落穂などを啄んでいるのだ。冬が到来する前の鳥たちの懸命な営みであろう。平成27年作。

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