「秋深し」は秋も半ばを過ぎていよいよ季節が深まった感じをいう。一歩ずつ近づいてくる冬を前にした、深閑とした静けさが感じられる季語。
掲句は、十余年前に亡くなった父宛てに届いた封書を目にして、亡き父のことを思い、秋の深まりを覚えたという句意の作品。父亡き後、父宛てに来る手紙はほとんど途絶えたが、それでも稀に父宛ての手紙が届いていることがある。多くは種苗や園芸の会社からのセールスの葉書で、即座に破り捨てるものばかりだ。しかしその時手にしたのは、差出人が個人の一封書だった。秋が深まっていく森閑とした思いが、その時の私を包んでいたように思う。平成28年作。