骨壺を置けばこつんと山に冬

太平洋側では、冬になると晴れる日が多く、毎日毎日からからに乾いた空を痩せた雲が風に吹かれてゆく。

掲句は父の逝去に際しての諸作の一つ。四十九日の法要を済ませて納骨する頃は、既に11月の立冬を過ぎていた。奥武蔵の杉山檜山に囲まれた墓へ坂を上りながら、母が父の位牌を持ち、私が父の骨壺を抱いた。住職にお経を唱えてもらい、骨壺を納めた。骨壺が穴底のコンクリートに触れた瞬間、こつんと冷たい音がした。山間(やまあい)に既に到来している冬の音だった。平成11年作。『河岸段丘』所収。

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