蓑虫に聞かれてをりし独り言

蓑虫(みのむし)はミノガ科の蛾の幼虫。木の葉や枝を糸で綴った袋を作り、その中に棲む。蓑虫には発音器官がなく、実際に鳴くことはないが、〈蓑虫の音を聞きに来よ草の庵 芭蕉〉など詩歌の伝統では鳴くものとされてきた。

独り言を言ってしまってから、誰かに聞かれていたのではないかと、周りを見回すことがある。誰にも聞かれていなかったことが分かるとほっとする。しかし、傍らの枝に付いていた蓑虫には、私の独り言が聞こえていたような気がした。掲句はそのような心持ちを句にしたもの。秋が深まっていく頃であった。令和5年作。

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