白膠木(ぬるで)はウルシ科の落葉小高木。全国の平地や山間の林縁に自生する。ヌルデの樹液を器などの塗料として使ったことから、塗料を意味する「塗る手」が転訛してヌルデとなったという。晩夏初秋の頃、枝先に円錐花序を出して、黄白や白色の小さな花を多数咲かせる。秋の紅葉がひと際鮮やかで、「白膠木紅葉(ぬるでもみじ)」は秋の季語に分類されている。

「木守(きまもり)」は収穫の後に一つ二つ木に残しておく柿の実や柚子の実などをいう。榠樝(かりん)その他の果樹でも、収穫の後梢に残っている実を見かけることがある。翌年の実生りへの祈りからともいわれる。
掲句は、中央線で笹子口を抜け甲府盆地に入ったときの情景を句にしたもの。家々の庭の柿や柚子、榠樝は、おおかた捥がれて梢に二、三残すのみだったが、初冬の山国の空を背景に、色鮮やかに目に残った。山梨は飯田蛇笏、龍太父子が生涯を過ごした地であり、甲府盆地に入った心の昂ぶりが、この句の弾むようなリズムになって表れていると思っている。平成27年作。
漢字表記では「更科升麻」。キンポウゲ科の多年草。全国の山地の樹陰、草地、湿地などに自生する。開花期はおもに秋で、20~30センチの穂状の白い花を咲かせる。根茎は漢方の生薬として用いられる。なお、歳時記には掲載されていない。

北米南部原産のムクロジ科の一年草又は多年草。観賞用として庭先などで栽培される。蔓性の茎は巻ひげでフェンスなど他物に絡みつきながら生長する。晩夏から秋にかけて白い小花を咲かせ、その後紙風船のようにふくらんだ袋状の果実をつける。見た目にも涼しげなことから、緑のカーテンとして植えられることも多い。

「帰省」は学生や勤め人などが夏休みを利用して、故郷や実家に帰ること。特に地方の盆の行事に合わせて帰る人が多く、お盆の前後は道路や交通機関が混雑する。
掲句は、父の帰省について行った子供時代の記憶がもとになってできた作品。父の生家は当時の大里村(現在は熊谷市)の荒川沿いにあり、電車とバスを乗り継いでも、最寄りのバス停からかなりの距離を歩かなければならなかった。遠くに見えている荒川の堤防が、歩いても歩いても中々近づいて来なかった記憶がある。遠路を歩く人間にとって、夏の木蔭は有難いものである。ときには伯父さんがトラクターでバス停まで迎えに来てくれていたこともあった。平成26年作。