夏の終わりを「夏の果」という。夏を惜しむ思いの感じられる季語。立秋前後ではまだ暑さが厳しく、連日の暑さに辟易して、夏を惜しむ思いなど湧いてこない。実感として夏を惜しむのは、子供たちの夏休みが終わる8月末頃だろうか。
掲句は、本を読んだり書いたりするのによく喫茶店を利用していた頃の作品。週末ごとに出掛けて、通りすがりの喫茶店で小半時憩うのが当時の習慣だった。本を読んでいて、気がつくと店内に客は私一人だった。街中よりも時間がゆったり流れているような喫茶店のほの暗い店内で、道を行く疎らな人影を眺めながら、今年の夏も終わったのだと思った。名残惜しさと安堵感が入り混じっていた。平成29年作。