かなぶんのよぎりし闇の青臭し

「黄金虫(こがねむし)」と「かなぶん」は食性の特徴が異なり、「黄金虫」の成虫は葉、幼虫は根を食害するのに対し、「かなぶん」の成虫は樹液を吸い、幼虫は腐葉土などを食べるためむしろ益虫に分類される。しかしこの両者は外観が似ていることから、歳時記でも「かなぶん」は「黄金虫」の傍題として扱われ、両者を混同する解説が散見される。夜、派手な羽音を立てながら灯火を目がけて飛んでくるのは「かなぶん」である。

掲句は、夜、灯火や網戸を目がけて飛んできた「かなぶん」を詠んだもの。夏の夜は暮れきっても、昼間の草木の緑が闇に滲んでいるように思えた。昆虫たちの命を育む闇に青臭さを感じた。令和5年作。

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