冷房は、現在家庭、学校、オフィスその他の建物内や電車内など至るところに普及し、夏季の日常生活は冷房なしには済まされない。ときには、自然から隔離された冷房の室内よりも、戸外の涼風が恋しくなることもある。
掲句は、秩父の横瀬町歴史民俗資料館を訪れたときの作品。冷房の効いた館内には、近くの鍾乳洞から出土したオオカミの化石が展示されていた。13万年前のものだという。秩父の山々にはかつて沢山のオオカミが生息し、人々の信仰の対象になってきた。この地域には、オオカミを「お犬様」として祀っている神社が数多くある。オオカミは20世紀初頭に絶滅したとされるが、現在でも人々の心に宿り続けているという。ガラスケースのオオカミの化石を眺めながら、オオカミが野山を歩き回っていた頃のことに思いを巡らした。平成26年作。