ヨーロッパ原産のムラサキ科の多年草。漢字表記では「鰭玻璃草」。明治時代に導入され、食用・薬用として栽培されていたが、その後野生化した。夏、釣鐘形の花を多数つける。花色は多くは紫だが、白、淡黄色、淡紅色のものもある。

ヨーロッパ原産のムラサキ科の多年草。漢字表記では「鰭玻璃草」。明治時代に導入され、食用・薬用として栽培されていたが、その後野生化した。夏、釣鐘形の花を多数つける。花色は多くは紫だが、白、淡黄色、淡紅色のものもある。

「囀(さえずり)」は、春になって繁殖期を迎えた小鳥たちの、求愛や縄張りを知らせる鳴き声。潤いのある春空のもと、小鳥たちは高い梢などに姿を見せ、美しい声で囀り始める。
掲句は「囀」に、「割りきれぬ数美しき」との数学的な美意識を取り合わせた二物衝撃による作品。割り切れない数字、例えば11、13、17に美を感じるか否かは人それぞれだろうが、作者はそこに抽象的な美を感じ取った。折から麗らかな外界から聞こえてくる小鳥たちの生身の声。抽象的な美と小鳥たちの生身の声が響き合う。『俳句』2024年7月号。
米国中部原産のバラ科キイチゴ属の低木及びその果実で木苺(きいちご)の一種。初夏の頃花をつけた後、7月から8月上旬にかけて真っ黒に実が熟する。果実は生食も可能だが、酸味があるためジャムや果実酒にすることも多い。外来種であり、モミジイチゴ、ナワシロイチゴ、カジイチゴ、バライチゴ等日本に自生する木苺(夏季)とは趣が異なるが、「木苺」として詠むこともできるだろう。

浜木綿(はまゆう)はインド周辺原産のヒガンバナ科の常緑の大形多年草。関東以南の海岸に自生するほか、公園や庭に植えられる。盛夏の頃、葉間から花茎を立て、茎頂に芳香のある白い花を傘形に咲かせる。別名「浜万年青(はまおもと)」。

初夏は新緑の頃から梅雨に入る前頃までをいう。一年のうち最も安定した気候であり、清々しい空気を胸いっぱいに吸いたくなる季節。
掲句は初夏の海を前にして、風にのってくる潮の香を「分娩室の匂ひ」と断定した作品。その断定に、永年小児科医であった作者の日常や経験が活きている。分娩室は緊張感の高い非日常の空間であって、決して安らぎの空間ではないが、そこにはきっと生まれてくる嬰児の匂いや母体の羊水の匂いなどが満ちていることだろう。それは原初の海原を想起させる匂いなのではなかろうか。『俳句』2024年7月号。