がれ場辿りて眼前に氷河聳つ

「氷河」は高山の万年雪が積雪の圧力によって氷塊となり、ゆっくりと低山へ流れ下るもの。夏の間、登山・観光の目的地となるので夏の季語。ただし、日本では見られない。

掲句は、ニュージーランド旅中の作品。滞在7日目、同国最高峰のマウントクック(マオリ語ではアオラキ)に最も近いところを歩いた。キャンプ場から木道や吊橋が続き、がれ場のような岩がゴロゴロしているところを抜けると、目の前にマウントクックが、斜面のフッカー氷河とともに聳え立った。谷川を轟々と流れ下る白濁した水は、氷河や峰々の残雪が解け出たもの。原初の地球を思わせるような荒々しい自然が目の前にひらけた。涼むような木蔭はなく、頭上から初夏の太陽がハイカーたちを容赦なく照り付けた。

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