地中海・カスピ海沿岸等を原産地とするマメ科の一、二年草。日本へは8世紀頃渡来。春に白や紫の花が咲いた後、莢(さや)が空に向かって直立する。莢の中には3~6粒のお多福の形の豆がある。初夏の頃、若い莢を収穫し、緑の豆を茹でて食べる。

「春霙」は春になってから降る霙(みぞれ)のこと。関東地方南部では、冬よりも春になってから雪が降ることが多く、それも水気の多い牡丹雪や霙に見舞われることが多い。
掲句は前年2月に亡くなった飯田龍太を偲び、春の霙の彼方に消えてゆく山影を眺めていたときの作品。薄明るい空からとめどなく降ってくる霙を眺めていると、時間の観念がいつしか消え、茫漠たる空間にひとり取り残されたような錯覚を覚えた。飯田龍太には、平成2年4月から4年6月の『雲母』終刊まで同誌作品欄で選を受けた。当時は全くの初心者で、さして交わる機会もないまま終わってしまった。平成20年作。『春霙』所収。
春に降る霙。それまで降っていた雨が霙に変わったり、水分の多い牡丹雪が途中で霙に変わることがある。芽吹き始めた草木に微かな音を立てて降る。冬と違い、陰鬱な印象はないが、心にしみてくる静けさがある。

ヤナギ科の落葉低木。日当たりのよい山間部の渓流沿いや川べりなどに自生するほか、観賞用にも植栽される。早春の頃、葉より早く、ふわふわした銀白色の毛で覆われた大形の花穂を上向きにつける。この花穂がネコの尻尾を思わせることからこの名がある。真っ先に春の訪れを告げる植物の一つ。

「桜蝦(さくらえび)」は相模湾・駿河湾で獲れる深海性の小海老。透明で桜色をしていることからこの名がある。旬の時季に生食するほか、干海老にすることが多い。
掲句は宴会料理に出た一鉢の「桜蝦」の美しい紅に、お祝いの気分を見出しての作品。といっても、これまで数知れないほどの宴席を経験してきたため、誰の祝いの席だったか、今となっては思い出せないのだが・・・。春は人事異動の季節で、栄転や昇進にともなう歓迎会も多い。俗世間の行事であるそうした宴会は句の素材や対象にはなりにくいが、この時は宴席にあっても、俳人としての目を失わなかったと見える。平成23年作。