かげろふに俤つくれ石の上 芭蕉 貞享5年、伊賀の国阿波の庄の新大仏寺での吟。芭蕉は『笈の小文』の旅中だった。懐古の情による作であることは分かるが、「俤」というだけで、詠む対象が明確に示されていないことがこの句の弱さとなっている。
丈六にかげろふ高し石の上 芭蕉 『笈の小文』には、「伊賀の国、阿波の庄といふ所に、俊乗上人の旧跡有り。・・・」との文の後、掲出の句形で掲載された。丈六の尊像は跡形もないのだが、「丈六に」と言ったことで、作者、読者の目に失われた丈六仏の面影が目に浮かぶ句になった。陽炎が丈六(1寸6尺)にもなることはないのでこの句は写実によるものではないが、作者の懐古の情を具象化し、目に見える形で示す言葉として「丈六に」は効果的だ。

