「年来る」は新年の傍題。始まったばかりの年のこと。年の始め。一方、「行く年」は過ぎ去ろうとしている一年を指す。いずれも「年」を擬人化した表現。
掲句は、大晦日から元旦を迎えるまでの時の流れの中で、「年」の歩みに対する感触・感慨を作品化したもの。作中には「行く年」「年来る」という二つの季語が用いられているが、「年来たる」との年初の思いが句の中心にあるだろう。「年」という目に見えない巨大な存在があって、旧年から新年へと歩みを進めていく、その歩みが同じ歩幅だというのだ。淡々として、しかも冷厳な月日の歩みを思わせる。『俳句界』2024年1月号。


