臘月やどの山襞もひと棲む地

「臘月(ろうげつ)」は師走、極月などとともに旧暦12月の異称。「臘」は、冬至後の第三の戌の日に行われる中国の祭のことで、猟の獲物が神や祖先に祀られるという。この「臘」が転じて、年の暮や旧暦12月を「臘月」とも呼ぶようになった。

掲句は長野の野辺山高原から東に連なる秩父山系の山々を眺めていてできた一句。山々は夕映えながら、山襞は濃い翳となっていた。それぞれの山襞には集落があり、古くから人々が定住して生活を営んでいることを思った。上五は「十二月」「極月や」でもよかったが、「臘月」という古い言葉の味わいを活かしたかった。平成16年作。『河岸段丘』所収。

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