夜が長い秋は闇に親しむ季節だ。闇の中で虫の声に耳を澄ましていると、来し方やわが身の行く末のことが胸中を去来する。
掲句は暗がりで虫の鳴き声に包まれていての作。近くの闇に鳴いているコオロギも、たまたまコオロギに生まれて、今を生きている。私も60余年前に人に生まれて今を生きている。人の命もコオロギの命も、ともに宇宙の生々流転の中にあるというようなことを思った。令和4年作。
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