キンポウゲ科センニンソウ属の蔓性の多年草。ほぼ日本全国に分布し、日当りの良い山野や低木林の林縁、土手などに自生。晩夏から初秋にかけて、葉の脇から伸びた花茎に芳香のある白い四弁花が円錐状に集まって咲く。一般の歳時記には載っていない。

夏の富士は、雪が消えて山膚を現した富士。山開きは7月1日。これより登山シーズンとなる。
掲句は夏の富士を擬人化した作品。少し離れて佇む作者に、富士が、胸ぐらに飛び込んで来いと呼びかけているのだ。掲句のよろしさは、大胆な擬人化により雄渾な夏富士の姿が見えてくるところ。表面的な写生では得られない富士の雄姿が、一読、立ち現れる。『俳句』2023年9月号。
偶蹄目シカ科の哺乳動物。ほぼ全国に生息するが、豪雪地帯では見かけない。草食性で昼夜の別なく行動する。夏は茶褐色の地に白斑(鹿子斑)、冬は濃茶や灰褐色の無地となる。交尾期は晩秋の頃で、牡は枝分かれした角を持ち、角を打ち合って牝を奪い合う。牝を求めて鳴く声には哀愁がある。

池や沼よりも景に広がりがあるのが湖。澄み切った湖面に映る岸辺の紅葉や真っ青に澄んだ空。高空を流れゆく雲。夏の頃の賑わいが嘘だったかのように閑散とした湖畔には、貸しボートや遊覧船が並ぶ。爽やかな中にも夏が去った寂しさがある。

稲が穂に綿毛のような花をつけるのは初秋の頃。まだ暑さが厳しいが、秋の気配も少しずつ感じられてくる。開花時間は2、3時間で、その間に風によって受粉が行われる。人目につかない密やかな光景だが、その年の米の出来高と直結する植物の営みだ。
掲句は、「稲の花」のそうした風情が活かされている作品。真昼間に稲を吹く風は、夏から秋への確かな季(とき)の歩みを感じさせる。風のこゑや地のこゑには、豊作への人々の祈りも込められているようだ。『俳句』2023年9月号。