孕み牛蠅取リボン垂れてをり

蠅叩、蠅捕紙、蠅捕リボン、蠅捕瓶などの蠅を捕まえる器具や道具類は、いずれも夏の季語。蠅が人間の生活圏で目につかなくなるにしたがい、以前身近にあったこれらの諸道具も姿を消した。だが、厩や牛舎では、これらの諸道具はまだまだ活躍している。

掲句は、牧場の酪舎を覗いたときの作品。昼なお暗い酪舎の中には、出産をひかえた牝牛の暑苦しい息が充満しているように思えた。大儀そうに腹這う牛の顔や尻尾に、無数の虻や蠅がたかっていた。暗がりに蠅取リボンが垂れていた。平成22年作。


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