水攻めの名残の起伏行々子

行々子(ぎょうぎょうし)は葭切のこと。初夏に日本各地の川原や湖沼などの葦原に飛来し、繁殖期の間、オスはギョッギョッと騒がしく囀る。関東平野でもよく見かける鳥だ。

掲句は、戦国時代に水攻めが行われた忍城(おしじょう)跡での作品。城の水攻めといえば、備中高松城が有名だが、豊臣秀吉の小田原征伐に際して行われた忍城の水攻めも、知る人ぞ知る戦国時代の事跡だ。忍城は豊臣方の水攻めには耐え抜いたが、明治時代には廃城となり、土塁の一部を残して取り壊された。現在は公園となり、外堀や土塁の一部が当時の地形をとどめているに過ぎない。折から辺りの葦原で、暑苦しい声で葭切がしきりに鳴いていた。平成16年作。『河岸段丘』所収。


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