明治の和綴昭和のざら紙黴の中

「黴」(かび)は、菌類のうち茸にならないものの総称。梅雨を始めとして夏の高温多湿の状態では、食物や書籍、衣服などあらゆるものに黴が発生する。我々は、生活空間の様々なところで黴を目にする。放っておかれて黴びないものはない。

掲句は、職場から派遣された研修で明治以来の古文書を目にする機会があり、その綴じ方や紙質に時代の推移を感じてできた作品。明治時代の文書が、日本伝統の和綴じで端正に仕上げられていたのに対し、昭和初期や戦時中の文書が、劣悪なざらざらした紙を用いていて、劣化著しいのを目の当たりにしたのだった。下五の「黴の中」は、無慈悲で容赦のない月日の経過を表そうとした。平成14年作。『河岸段丘』所収。


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