アヤメ科の多年草。ノハナショウブを原種として改良された園芸植物で多くの品種がある。江戸系、肥後系、伊勢系などの系統があり、5月下旬~6月に、花茎の頂に典雅な花をつける。花弁の基の黄色い目形模様が特色。なお、端午の節句に菖蒲湯にするショウブは、ショウブ科に分類される別種の植物。



アヤメ科の多年草。ノハナショウブを原種として改良された園芸植物で多くの品種がある。江戸系、肥後系、伊勢系などの系統があり、5月下旬~6月に、花茎の頂に典雅な花をつける。花弁の基の黄色い目形模様が特色。なお、端午の節句に菖蒲湯にするショウブは、ショウブ科に分類される別種の植物。



「袋角(ふくろづの)」は、毎年、春に鹿の角が根元の部分から落ちた後、新しく発育を始めた角のこと。皮膚をかぶって、それが袋に似た状態であるところから、このように呼ばれる。
掲句は、袋角の牡鹿が、東大寺の南大門を出てきたとの句意。南大門は築千年の歴史を誇る国内最大の山門であり、奈良のシンボルでもある。奈良に住む人々や参拝者ばかりでなく、鹿にとっても、日頃親しんでいる建造物なのだ。その大門と、毎年生え変わる角を持ち歩く鹿の取り合わせには味わいがある。奈良時代から続く人と鹿との関わりにも、一読想像が広がる。『俳句』2023年6月号。
我々が普段目にする紫陽花の多くは、日本に自生する原種ガクアジサイから改良した園芸品種。開花期は梅雨時の6~7月で、額咲き、手まり咲きなどがある。このうち額咲きは、額の花として歳時記に別に掲載されているので、俳句で紫陽花といえば、手まり咲きの花を指す。土壌の酸度によって青色になったり、ピンク色になったりする。雨に打たれて他の花が萎えている中で、紫陽花が生き生きと咲いているのは印象的だ。



上の写真は、アナベル(アメリカ原産のアジサイ)。




「蝌蚪(かと)」は、蛙の幼生。お玉杓子ともいう。卵から孵った後、暫くの間は無数にかたまっているが、成長に従い、尾や手足を使って泳ぎ出す。
掲句の「蝌蚪の国」は、水底を覗き込んだとき、無数の蝌蚪が「国」と呼べるような一つの社会を形成しているように見えることをいう。その「蝌蚪の国」も、我が影の中に納まってしまう程の小さな存在に過ぎない。そして、人間も、天地を司る神の目から見たら、この上なく微小な存在である。作者にとって、この世に存在するということの不思議さを感得した一瞬だったのだろう。『俳句』2023年6月号。
「鶯」(うぐいす)は日本の三鳴鳥の一つで、春になると山から里に現れて美しい声で鳴くため、古来から、春を告げる鳥として親しまれてきた。警戒心が強く、羽の色も地味なため、声が聞こえても姿を見る機会は少ない。鳴き声としては、ホーホケキョと聞きなす囀りのほか、ケキョケキョケキョと続けざまに鳴く「谷渡り」といわれるものがある。「谷渡り」は繁殖期のオスが出す声の一つで、メスに危険を知らせたり侵入者や外敵を威嚇する意味をもつという。
掲句は、釣果を求めないとの句意に加えて、そのゆったりとした声調が、渓流釣りの醍醐味を感じさせる作品。釣り場を定めて糸を垂れると、折から聞こえる「鶯の谷渡り」。清流の響きや森の匂いに溶け込んで過ごす釣りの一日に、作者の心は伸び伸びと解放されるのだろう。『俳句』2023年6月号。