「白魚」はシラウオ科の硬骨魚で体長10cmほど。春を告げる魚として知られ、「白魚」「白魚飯」「白魚汁」「白魚鍋」等はいずれも春の季語。
掲句は、小ぢんまりとした店のカウンター席の前に「しらうお」を使った料理が並んでいる場面を想像したい。春の一日は中々暮れようとしない。作者は、暮れるのを待ちかねて、まだ客の疎らな店内で、白魚鍋などを肴に酒を酌んでいるのだ。そこには、何事にも束縛されない自由を愉しんでいる気分があるだろうし、旅先の解放感もあるのかも知れない。昼の酒には、一抹の後ろめたさも混じるのだが・・・。『俳壇』2023年5月号より。

