「鶯餅」「蕨餅」は春早々に、「桜餅」は少し遅れて桜の咲く頃店頭に並ぶ。「桜餅」には、関東風の長命寺と関西風の道明寺があるが、ともに薄紅色の餅肌で、塩漬けした桜の葉で包む。一年のうちほんの一時期店頭に出てくるものだが、好物の人はその時季の到来が待ち遠しいだろう。
掲句は、婚儀や遠忌の法要などで久し振りに顔を合わせた従弟・従妹たちが同座して、歓談している場面。「いとこ」という関係は、ごく親しい場合を除いて、一般には会う機会も限られ、年を経るにつれて疎遠になっていくものだが、そんな彼ら彼女らが並んでみると、やはりどことなく似ているところが、目についたのだ。「いとこ」同士という緩やかな関係と「桜餅」とが、どことなく照応していて面白い。『俳壇』2023年5月号より。


