燻されて日が真つ赤なり葭を焼く

「野焼」は、手元の歳時記に初春の季語として掲載されているが、「葭焼」(よしやき)はその傍題として扱っていいだろう。土地を肥やし害虫を駆除して、新しく生えてくる葭などの草の生育を促す効果があるという。

掲句は、渡良瀬遊水地に葭焼きを見に行ったときの作品。火入が行われると、野を渡ってくる風に、高々と火が立ち上がり、また、吹きちぎれた。火入前には晴れわたっていた空が暗くなるほど、葭焼きの煙が立ち込め、身体や衣服に煙のにおいが沁み付いた。焼畑農法の昔から続いている人と自然の関わりを思い浮かべた。平成21年作。『春霙』より。


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