蘆牙や水を見てゐて眼冷ゆ

「蘆牙」(あしかび)は、蘆の芽のこと。春先の水辺に一斉に芽を出す。郊外や山野だけでなく、都会の公園の池のほとりでも見掛ける光景だ。初めは、水の上に先端を出している小さな芽に過ぎないが、その後ぐんぐん生長し、人の背丈を越えるようになる。

掲句は、とある都会の公園の水辺で、仕事の合間に目を休めていてできた作品。当時、仕事、私生活とも、何かと思い悩むことが多かった。「眼冷ゆ」というのは、そのときの私の実感そのままだ。「蘆牙」と取り合わせたことによって、ひりひりとした春先の感触を捉えることができたように思う。『春霙』所収。平成21年作。


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